2008 Fiscal Year Annual Research Report
中国の労働移動と労働市場に関する調査研究ーー中国経済はルイスの転換点を超えたか
Project/Area Number |
20530258
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
厳 善平 Momoyama Gakuin University, 経済学部, 教授 (00248056)
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Keywords | 中国経済 / 二重構造 / 転換点 / 労働力の無制限供給 / 労働力移動 / 労働市場 / 農民工 / 農家経済 |
Research Abstract |
中国経済における労働力の需給関係について、人口センサス、農業センサスなどから得られた集計データを用いて実証的に分析した。その成果の一部は『東亜』,『中国ーー社会と文化』などで公表した。それによると、2004年頃から叫ばれている労働力の供給不足、あるいは、中国経済がすでにルイスの転換点を超えてしまった、といった議論は十分な根拠を持っておらず、2008年末まで一部の都市で見られる農民工(農村からの出稼ぎ労働者)の不足や賃上げは主として制度改革などから影響を受けたものであると指摘することができる。世界経済の景気後退で忽ち2000万人以上の農民工が仕事を失い、大卒者の就職難が社会問題と化していることもデータ解析からの結論を支持している。 中国経済における労働力の需給関係をミクロ的に見るために、農民工を数多く輩出した中部地域(安徽省、江西省)で農家労働力の利用状況調査、そして、農民工をもっとも多く吸収している広東省珠江デルタで農民工の就業・生活実態調査、をそれぞれ実施し、大量の一次データを収集することができた。また、中部地域の農村地帯、沿海部の企業などを視察し、農家、農民工、企業経営者、行政などに対するヒアリング調査も行った。一連の現地調査から得た印象は、集計データの分析から得られた知見を補完する意味できわめて重要であった。 これらの調査から得られた個票データなどを整理、分析し、その成果を学会報告などで公表していく予定である。
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