2010 Fiscal Year Annual Research Report
リレーションシップ貸出の限界と新しい中小企業貸出手法の影響
Project/Area Number |
20530279
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
加納 正二 岐阜聖徳学園大学, 経済情報学部, 教授 (50319787)
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Keywords | リレーションシップ貸出 / ソフト情報 / 貸出技術 / 取引銀行数 / 中小企業金融 / メインバンク |
Research Abstract |
・中小企業の取引銀行数に注目し、リレーションシップの多寡がリレーションシップ・バンキングにどういう影響を与えるか考察した。県別には沖縄、宮城、福井は1行取引の割合は高く、鳥取、島根は低い。取引銀行数は、地域銀行をメインバンクとする中小企業よりも都市銀行をメインバンクとする中小企業の方が多く、1990年よりも2000年に多い傾向にある。 取引銀行数の要因分析の結果、企業規模が大きいほど、操業年数が長いほど、貸出市場の競争が激しいほど、取引銀行数は多くなる。企業の成長性については、売上高の増加率が下がる場合の方が、取引銀行数が増加しており、中小企業は資金調達が困難になることを危惧して取引銀行数を増加させると考えられる。中小企業の代表者の変更は、地域銀行をメインバンクとする中小企業の1980~1990年および1990~2000年の両期において、また都市銀行をメインバンクとする中小企業の1990~2000年の時期において、符号は負で有意であった。すなわち、代表者の変更がないほうが、取引銀行数が増加する傾向にあった。このことは、中小企業の代表者が変更されず、継続すれば、それだけ金融機関側はソフト情報の入手・吸収・蓄積が容易になり、企業側も新たなリレーションシップを構築する必要がないと考えられ、取引銀行数が減少すると考えられる。 ・リレーションシップを変更した中小企業は、その約3割がリレーションシップを再び変更することがわかった。今後、経済合理性のみならず、中小企業経営者の意思決定の心理学的要素を考慮した考察が必要であろう。
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