2011 Fiscal Year Annual Research Report
日中戦争期・内戦期における中国江南農村社会経済の実態と変化に関する研究
Project/Area Number |
20530292
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
夏井 春喜 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (80155978)
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Keywords | 経済史 / 江南 / 田租と田賦 / 田底・田面 |
Research Abstract |
本研究計画は、1937年から1949年までの日中戦争期から国共内戦期の中国江南地域の地主-小作関係を中心とする農村社会経済の実態と変化を、マクロフィルム化された地方新聞や実態調査報告書、及び日本・中国・台湾等で収蔵されている文書資料の分析を通じて考察するものである。本研究計画の最終年である平成23年度は、内戦期における新聞資料及び中国の常熟市〓案館、台湾の国史館・中央研究院収蔵の文書資料の中心に分析を行い、併せて1937年から1949年の12年間の「戦時期」における地主-小作関係を主とする江南農村の変化の考察を報告書としてまとめている。そこでの主な知見は以下の諸点である。(1)戦争に伴う混乱と農村における共産党等の活動で、都市部に居住する地主が佃戸を掌握することは困難で、地主個々の収租は不可能となり、租賦併徴、聯合収租等による地方政府の権力に依存しなければ地主制は存続できなくなっていった。(2)田賦実物徴収に伴い、「指佃完糧」方式が実施され、地方政府が田賦を直接耕作者である佃戸から徴収するようになり、地方政府にとって佃戸が田賦負担者として意識されるようになった。(3)佃戸の抗租風潮が高まり、地主の収租が困難となったことで、戦前には田底価格に対して低かった田面価格が上昇し、戦後には田底価格より相当高いものになった。田面価格の上昇は佃戸に土地所有者の地位を意識させると共に、低い田底価格に拘わらず農民から「不労所得」を得るものとして地主の収租そのものを問題とする輿論をも生み出した。(4)国民政府は地主-佃戸関係を改善するために、二五減租・三一減租という減租政策から、自作農創設政策へ転換し、呉県・常熟・呉江で具体的自耕農創設模範区を作り、銀行借款での地権購入を図っていた。(6)以上の状況の中で、地主の一部には国民政府の政策を支持し、土地の佃戸へ売却を求める動きも出現してきた。このように中国共産党政権成立以前に既に一定程度土地改革の条件が江南において整っていたことが明らかになった。
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Research Products
(3 results)