Research Abstract |
内閣資源局「試験研究機関状況調」『内外調査資料』第2年第6輯(1930年6月)に収録されている約800の試験研究機関のデータ(名称,設立年月,所在地,試験研究項目)をもとに,その欠落部分を各種資料で補足し,データベースを作成した。そして,それをもとに,日本における試験研究機関の制度化の特徴を統計的に分析した。その結果,1870年代から1920年代末までの試験研究機関の設置動向を,官公私立別,分野別,地域別に,詳細に観察することができた。すなわち,試験研究機関の設置は1890年代後半から増加し始め,1910年代に増加のピークを迎えたこと。このピークの主因は私立の化学分野の機関の増加であったこと。農林水産分野では工鉱業分野よりも早く試験研究機関の制度化が始まり,その多くは道府県・植民地の公立機関であったこと。地域別の観察では東京所在の機関の設立が早く,植民地のそれが遅いという相違はあったものの,全国的に機関設置のペースに大きな隔たりは見られなかったこと,などである。 また,『改訂全国学会協会要覧』(日本学術振興会,l942年)及び『全日本科学技術団体連合会加盟団体名鑑』(同会,194l年)に収録されている学協会のうち,自然科学系の233団体を選び出し,上記と同様のデータベースを作成した。そして,学協会の制度化の特徴を分析した。その結果,学協会の設立件数は1920年代後半に増加のピークが見られたこと,衛生医学分野の学協会の設立が顕著であったこと,などが明らかになった。
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