2009 Fiscal Year Annual Research Report
仏語圏諸国における高等技術教育制度と資格―伝統の存続と国際化への対応
Project/Area Number |
20530303
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
松田 紀子 Shizuoka University, 国際交流センター, 准教授 (80432201)
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Keywords | 教育制度 / 高等教育 / 国際化 / 植民地 / 経済史 / 技術教育 / フランス |
Research Abstract |
近年、グローバル化とIT/FT「革命」の中でモノ作りの再編を迫られる高度先進諸国では、「理工系教育の危機」「大学院教育の拡充」が叫ばれている。同時に、高等教育制度および資格(学位)制度にはグローバル化の要請が突きつけられており、教育制度改革に国際化への対応が求められている。本研究では、18世紀以来世界的に評価され注目されてきたフランスの高等技術教育制度を手がかりに、新産業および教育制度のグローバル化という二つの課題への対応について、(1)フランスおよび旧仏領諸国で今日どのような差異が生じているかを比較分析すること、また(2)フランスと深い関係を維持してきた中東欧の諸国で、欧州連合への加盟を目前に打ち出されつつある教育制度改革を分析すること、を目的としている。初年度である平成20年度には「伝統の存続」を検証する観点から、旧仏領インドシナにおける個々の高等教育機関の形成についての資料を現地の同時代文献に求めたのに続いて、平成21年度は「国際化への対応」の観点から、中東欧のEU加盟国における近年の国際化を意図した教育制度の改革について現地(ルーマニア、ハンガリー)の教育機関・大学で聞き取りを行うとともに、旧仏領インドシナ(特にベトナム)での近年の教育の国際化への取り組みに関する資料収集等を継続して行った。こうしたなか注目されるべきは、これらの諸国で取り組まれている高等教育機関の国際化への対応が、特に旧仏領インドシナのベトナムでは、伝統的なフランスとの関係をひとつの軸としながらも他の諸国(ドイツ・日本等)との連携のなかで、先進国の教育内容・大学運営手法をじかに持ち込もうとする極めて積極的または非常に大胆なものであるということである。こうした教育運営の成果が、実際に産業界とどのような関連性を持つかは、今後の調査の関心のひとつとなろう。
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