2010 Fiscal Year Annual Research Report
アジア・ネットワークにおける制度と生存基盤に関する基礎的研究
Project/Area Number |
20530305
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
籠谷 直人 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70185734)
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Keywords | 華僑 / 華人 / 印橋 / 商人ネットワーク / アジア・ネットワーク |
Research Abstract |
本研究は、2008年度から2010年度の3か年で華僑華人のネットワークをとおして、その生存基盤を検討することを課題としている。最終年度である2010年度においては、さまざまな、華僑・印僑商人さらにこれら華僑・印僑と取引をしていた日本の商人たちの聞き取り調査を中心に行うことによってアジア・ネットワークにおける制度と生存基盤について重点的に検討をおこなうこととした。 これらの聞き取り調査で判明したことは、華僑・印僑などの商人のネットワークは、出身国(地域)ということに裏付けられつつも、境界線にとらわれない<強い関係性と緩やかな領域性>を特徴としてネットワークを形成・維持していることであった。 このようにアジア・ネットワークが形成されたのも近代におけるアジアの帝国というものは、近代ヨーロッパ帝国のような重商主義とは無縁であったがために華僑・印僑商人らはアジアの開放性を活用することによって商人ネットワークを伸張させることに成功したといえる。さらにその商人のネットワークは、近代的帝国主義が提供した自由貿易原則や蒸気船航路などの公共財をも最大限に利用することによって近代アジア諸国における市場秩序を提供したことも明らかにされつつある。 アジア諸国の植民地化、領域の割譲、開港といった公権力間の衝突などがあっても、アジアの商人のネットワークは萎縮することはなく維持・拡大されていき、現在における華僑華人のネットワークに引き継がれていることがいえる。
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