2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530311
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
飯田 恭 Keio University, 経済学部, 教授 (20282551)
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Keywords | ドイツ / プロイセン / 農業改革 / 農民解放 / 森林 / 林野 / 近代化 / 農村史 |
Research Abstract |
19世紀前半プロイセンの王領地アムト・アルト-ルピンに関する史料を用い、領主(=国王)・農民間の権利義務関係の調整・償却過程の研究を進めた。その結果、農民の木材権(領主林=王有林から建築・修繕用木材を無償ないし廉価で得る権利)の廃止が調整・償却過程における最大の争点の一つとなり、それに対する農民の抵抗が極めて激しかったことが分かった。また、農民の抵抗の成果にはアムト内でも大きな差があり、賦役義務を負うラッシーテンが調整に際し、賦役からの解放と引き換えに木材権を無償で失ったのに対し、すでに賦役義務から解放されていた世襲農民の多くが償却後も木材権を保持することに成功したことも分かった。この成果について、政治経済学・経済史学会の秋季学術大会で報告するとともに、ドイツの学術誌Jahrbuch fur die Geschichte Mittel-und Ostdeutschlands, Bd.55に論文を発表した(下記11参照)。 上記の研究を通じて、従来ほとんど注目されてこなかった「木材権」の問題が、プロイセンの封建領主制=グーツヘルシャフトを理解する上での鍵となるとの認識に到達したため、「木材権」に焦点を当てながらグーツヘルシャフト史を再解釈する論文を、マクロの史料をも利用しつつ、書き始めた。これは2010年9月の農村史国際学会(サセックス大学・英国ブライトン)で報告する予定である。 その他、ブランデンブルク州中央文書館(ポツダム市)での史料調査を通じて、「木材権」(王有林からの建築用材支給)の問題にとどまらず、林野開発の問題全般がプロイセン農業改革にとって重要な意味を持っているとの印象を得た。林野については、耕地に比べてまだ研究が少ないこともあり、今後その研究を進めて行きたい。
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Research Products
(2 results)