2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530322
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
河合 篤男 名古屋市立大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (10275117)
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Keywords | 企業革新 / 変革型リーダー / CEO育成 |
Research Abstract |
マネジメント能力の形成経路を探求する研究である。形成経路の解明から、経営者育成に関する実践的示唆の導出を目指す。成熟化した日本の大企業において、新たなビジョンを構築して社員を動員できる経営者の育成は急務である。本研究においては、大学の教育プログラム、企業における実務経験(研修を含む)の種類と経験時期、形成されたマネジメント能力と到達職位を柱とする質問票を実施(平成21年9月~10月実施)。慶大加藤寛ゼミ出身者596名を対象とし、279通が回収された(回収率46.8%)。平成22年度においては、回収したデータの分析と追加的なヒアリング調査を実施した。約80%が上級管理職、約36%が役員(代表取締役および取締役)に到達しており、研究目的に対し一定の説得力ある母集団と判断。形成されたマネジメント能力に係るデータにつき、因子分析とクラスタ分析を実施。部下の管理や現場との対話に係る能力(帰納的な能力)、構想力やゼロベースでの発想に係る能力(演繹的な能力)、自信や信念といった決断力に係る能力(触媒的な能力)の3つタイプの能力に分類可能と判断。母集団の大部分が3タイプの能力を偏りなく形成し、かつ到達職位と形成程度が正の相関関係を持つことも分かった。企業における実務経験と経験時期については9因子が確認され、とりわけ、若年期に経営陣と接触し全社的視点を要する実務経験をすることが演繹的な能力を高めることが判明。一方、目標となる上司、周囲の人間との関係性を尊重し、後輩を熱心に育成する経験が、帰納的な能力を高める。過酷な仕事から自信を得ることや、思想家の書物などから自分の哲学を形成することが、触媒的な能力を高めると同時に、演繹的な能力を高めることも分かった。加藤ゼミという厳しい(大学の)教育プログラムで獲得した基盤をもとに、若年期から全社的視点、過酷な実務経験、自分なりの思考枠組み形成への努力、人間関係を重視する経験を経て、マネジメント能力と職位を高揚する姿が浮かび上がった。
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