2008 Fiscal Year Annual Research Report
企業事故発生のメカニズム-企業社会責任(CSR)の経営学的実証研究-
Project/Area Number |
20530335
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
谷口 勇仁 Hokkaido University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (60313970)
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Keywords | 企業社会責任(CSR) / 組織事故 / リスクマネジメント |
Research Abstract |
本年度の研究概要は以下の2点である.第1に,企業事故の発生メカニズムを検討している先行研究の広範なサーベイをおこなった.特に,近年注目されている経営学のアプローチである高信頼性組織(HRO : High Reliability Organization)研究と,古くから研究の蓄積がなされているヒューマンエラー研究について詳細な検討を行った.従来の企業事故研究は,事故を引き起こした組織を対象に,「なぜ,どのようにして事故が引き起こされたのか」についての解明を試みるが,高信頼性組織研究では,長期にわたって事故を引き起こしていない組織を対象に,「なぜ,どのようにしてそのような高いパフォーマンスが維持されているのか」についての解明を試みる.他方,ヒューマンエラー研究は,認知心理学や人間工学の分野を中心に展開され,1979年に発生したスリーマイル島原子力発電所事故(TMI事故)をきっかけに,多くの原子力発電所の事故,航空事故,医療事故,交通事故についてヒューマンエラーの存在が指摘され,これらの分野を中心とした研究が蓄積されている.本年度は,上記の2つのアプローチにおける研究の構図を明らかにし,当該アプローチの持つ課題について検討を行い,論文として出版した. 第2に, 日本における代表的な企業事故として位置づけられている,東海村JCO臨界事故(1999年9月30日発生)の事例分析に着手した.まだ全容を解明してはいないが,現在までの分析では,従来指摘されている,手抜きによる事故という解釈ではなく,継続的な改善の結果として事故が引き起こされたという解釈が可能であることが示唆された.
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Research Products
(2 results)