2010 Fiscal Year Annual Research Report
技術経営における組織能力構築と価値獲得の研究:日本製造企業の付加価値創造能力
Project/Area Number |
20530342
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
延岡 健太郎 一橋大学, イノベーション研究センター, 教授 (90263409)
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Keywords | 技術経営 / 組織能力 / 意味的価値 / コア技術 / 価値獲得 / 価値獲得 / 価値づくり |
Research Abstract |
価値獲得に必要とされる2つの条件は、平成21年度までに明確にしてきた。それらは、(1)技術的に模倣をされない独自能力(組織能力)の必要性と、(2)顧客価値としては、機能的価値を超えた意味的価値の重要性である。本年度の最重要な実績は、(1)の模倣をされない組織能力に関して最重要なのは「積み重ね技術」だということが実証されたことだ。研究計画であげた定量調査(質問票調査)の結果を活用し、一橋ビジネスレビューに査読付き論文として受理され「積み重ね技術の重要性:持続的な競争力をもたらす技術戦略」として出版された。革新技術によって特許を取得することに支えられた技術よりも、長年の試行錯誤によって学習されたノウハウや経験知に支えられた技術者の問題解決能力が、持続的な競争力を支える技術的な強みとして、圧倒的に重要だということが分かった。 積み重ね技術は、構築するのに長年を要するので、競合企業が模倣をしようとしても、短期間では決してできない。国の政策も、企業の戦略も、革新技術や特許に極端に偏っている現状に対して、実証的な反証として、極めて重要な研究だと考えている。積み重ね技術によって、擦り合わせ型の商品を開発し、意味的価値を創出する組み合わせが、日本企業の国際的な競争力にとって、最適な技術経営だということが示唆される。革新技術による機能的価値では、過当競争をまねいてしまう。この点を、国の政策や企業のマネジメントに取り入れることが求められる。学術的な貢献としては、資源ベースの戦略論や組織論の中で、模倣をされない最大の要因となる積み重ね技術の理論は、本査読論文で示された実証的な裏付けと共に新しい視点と示唆を提供した。
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