Research Abstract |
サービス業の働きとは,顧客自身あるいは顧客の所有物に対して,何らかの変化をもたらすことであると考える見方がある。筆者は,その見方が機能的観点に偏った見方であることを本年度の研究で明らかにした。そのきっかけとなったのは,筆者が実施したアンケート調査において,回答企業が異口同音に,自らの会社の役割とは,顧客の種々のニーズ,問題,などにソリューションを与えることだと答えていることを見出したことであった。すなわち,サービス業各社としては,顧客またはその所有物に対して,機能的に何らかの変化をもたらすことそれ自体を目的としているのではない。たとえ顧客またはその所有物に変化をもたらしたとしても,顧客が,そのサービスに満足しなければ,サービス売上げを継続的にあげることはできない。そこで,サービス業各社は,顧客の主観的満足,経験にターゲットを定めてサービス価値を高め,競争優位を築こうとしているのではないか,ということを解明したのである。ただし,サービス業には様々な類型があり,機能的なサービスを安定的に提供しようとするサービス企業群も見られることも明らかにした。すなわち,サービス企業には,対事業所機能的サービス,対事業所感性的サービス,消費者向け機能的サービス,消費者向け感性的サービスという4つの類型が見られることを本研究で明らかにした。いずれのサービス類型についても,消費者の満足,効用という視点に立ったサービス価値構築を試みる必要があるが,そのためには逆説的ではあるが,自社が顧客に対して客観的にはどのような変化を及ぼしているのかを見つめなおしたうえで,その変化に対し顧客がどの程度,満足を感じているのかを解明することが必要ではないかということを述べた。
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