Research Abstract |
今年度は, 日本, アメリカ, フランスおける内部統制監査制度の制定の背景, 制度化のプロセス, ならびに制度の基本構造について検討した。 いずれの国においても, 重大な会計不正事件の発生を受けて, 会計不正を防止し, 財務報告の信頼性を確保するために内部統制の充実が図られたということを確認した。 一方, 内部統制の有効性評価・報告・監査のアプローチは国ごとに異なることが明らかになった。特に監査のアプローチに関しては, 各国の内部統制報告の目的観の違いを反映して大きなそう甥があるように思われる。平成21年度以降, この違いの本質を明らかにすることによって, 内部統制報告および監査制度の充実に向けたインプリケーションを得たいと考えている。 今年度は, 各国における内部統制報告制度の意義と動向について, 日本管理会計学会九州部会において報告した。また, わが国における内部統制報告制度め実施初年度に当たって, 制度運営上特に問題であると考えられる点について具体的に検討し, 日本会計研究学会北海道部会において報告した後, その後の動向を考慮した上で, 「内部統制監査の意義と課題」(『會計』174(6)2008.12, pp.13-26)としてまとめて公刊した。本稿では, わが国の内部統制監査制度は, アメリカやフランスとはやや理念が異なり, 経営者のアカウンタビリティの解除手段として位置づけられているように思われるが, これが制度制定の背景と整合するのかどうかについてはなお検討の必要があること, また, 「重要な欠陥」に関する判断についても, 必ずしも理論的に整合的でない点が見られるという点などを明らかにした。
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