2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530400
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
蟹江 章 北海道大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (40214449)
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Keywords | 内部統制 / 内部統制報告制度 / 内部統制監査 |
Research Abstract |
本年度は,日米仏における内部統制報告制度を総括的に分析・評価することで,内部統制報告・監査制度のあり方について具体的な方向性を提示することを目指して研究を進めてきた。日本の内部統制報告制度は,アメリカの同様の制度を日本の実情に適合するように調整する形で制定されたものであり,証券市場規制の一環として実施されていることを初めとして,両制度には多くの共通点がある。これに対して,フランスの内部統制報告制度は,会社法に基づく制度として財務報告の信頼性の確保だけを目的とするものではない。それをひとつの重要な要素として含みつつも,会社の経営全般に関わる内部統制の整備・運用に係る経営者の責任とその遂行状況の説明を求めるものである。市場に対するディスクロージャーという側面だけでなく,会社の経営全般を有効かつ効率的に行うべき経営者の責任の遂行状況を,コーポレート・ガバナンスというより広い視点から確認しようというものであるという点に特徴がある。 こうした考え方の下で,フランスの内部統制報告書は,日米のような定型的様式ではなく,各社の経営者が独自の方法で内部統制の内容を具体的に説明するという形がとられている。これによって,株主は会社の経営を支える内部統制の状況を具体的に知ることができ,経営者が適切な経営を行う責任を誠実に果たしているか,さらには現在の経営者に引き続き経営を任せることが適当か否かを判断するためのひとつの重要な材料を得ることができるのである。このようなフランスの内部統制報告制度のあり方は,わが国で現在進められている会社法の改正に向けた議論において,各界から寄せられてい内部統制の運用状況に関する情報開示の充実に対する要請にも適合するものであり,今後のわが国における内部統制報告制度のあり方を考える上で示唆に富むものであることを明らかにした。
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