Research Abstract |
本研究は,わが国及び英米の文献・資料を手がかりにして,明治期に英米の簿記書が輸入されて以来,大きな進展が見られないわが国の簿記学を再検討すること,特に決算中心主義の簿記学に傾斜している現状の簿記学・簿記教育に対し,日常的な記録・計算プロセスにおける会計管理という見地も踏まえた簿記学の構築を企図するものである。 英米における複式簿記の研究は,20世紀初頭までの歴史研究が中心で,近年の英米の動向を踏まえた研究は行われておらず,20世紀初頭を代表する英米簿記書をベースにわが国の簿記学を確立・発展させた,いわゆる吉田簿記・沼田簿記以来,あまり大きな変化も見られない。 平成20年度は,スケジュール等の都合上,残念ながら英国での資料収集は適わなかったが,最近の日・米・英(加)の簿記・財務会計のテキストを中心に,会計システムに影響与える内部統制関連の文献,複式簿記の非営利組織への適用可能性を検討している公会計関連の文献など,幅広く収集することができた(和書22冊,米書12冊,英書7冊)。さらにOAIsteを利用し,先学が参考としたと思われる文献を含め20世紀初頭までの,膨大な英米簿記書の電子データも入手することができた。 収集した文献等に基づき,平成20年度は,意味や根拠を明らかにすることなく専ら記帳ルールとして教示されている簿記上の慣習について,その本来の意味を明らかにした上で,無用・不合理と考えられる慣習を整理し,研究成果として公表した。なお,高等学校教員向けに原稿依頼を受け,この梗概が商業教育資料にも掲載されている。また,学界ならびに実務界で,その標準化が叫ばれている勘定科目に関する論稿も執筆中である。
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