2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530408
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 秀樹 Kyoto University, 経済学研究科, 教授 (80173392)
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Keywords | 国際会計 / 概念フレームワーク / 忠実な表現 / 公正価値測定 / 比較制度分析 / 会計制度 / GAAP / コンバージェンス |
Research Abstract |
本研究の目的は,2004年に開始された国際会計基準審議会(IASB)と財務会計基準審議会(FASB)の概念フレームワーク共同プロジェクトを主たる検討素材としながら,会計基準のコンバージェンスおよびアドプションの今日的特徴と展開方向を明らかにすることにある。本年度は,FASB/IASB[2006], Preliminary View(Discussion Paper)と,その改訂版として公表されたFASB/IASB[2008], Exposure Draftの分析を通じて,従来の「信頼性」に代えて「忠実な表現」を基本的特性の1つとして措定する制度設計上の意味を検討した。FASB/IASBは,基本的特性のかかる差替えによって,有用な会計情報の識別プロセスから信頼性(とりわけその要素である検証可能性)の牽制作用を排除するとともに,会計において描写するべき現実世界の現象の「忠実な表現」を規範的指針として制度化しようとしたのであった。かかる制度改訂は,「記述的」なものから「規範的」なものへの近年のGAAPの変質過程を象徴的に具現したものとみなすことができるが,それはまた同時に,資産負債アプローチを概念フレームワークの基礎として採用したことのありうべき1つの論理的帰結を示すものでもあった。その背後には,収益費用アプローチに依拠したGAAP形成が,決定的な局面で既存実務への妥協を繰り返してきた「APBの失敗」の歴史的教訓があった。したがって,この制度改訂の試みは,根深い思想的要因に主導されたものと言える。本年度は,非営利法人における会計制度変化や会計学研究の方法にも言及しつつ,以上の検討作業を行った。
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Research Products
(5 results)