2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530408
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 秀樹 京都大学, 経済学研究科, 教授 (80173392)
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Keywords | 国際会計 / 概念フレームワーク / 忠実な表現 / 公正価値測定 / 比較制度分析 / 会計制度 / コンバージェンス / 非営利会計 |
Research Abstract |
本年度は,昨年度までの研究(とりわけ「忠実な表現」を基本的特性として採用した改訂概念フレームワークの論理分析を行った一連の研究)を通して明らかになった制度変化の特徴と意味を,制度派理論の一源流をなす理解社会学を援用することによって敷衍し,研究成果の体系化を試みた。その結果,市場参加者の目的合理的行動(zweckrational Handeln)と制度設計者の価値合理的行動(wertrational Handeln)の緊張関係が制度を押し動かすダイナミズムを生み出してきたと解釈することによって,随所に矛盾を含んだ複雑な近年の会計制度変化の特質を論理整合的に説明できることを明らかにした。すなわち,平時においては市場の評価(市場参加者の目的合理的行動)が制度形成や制度運用を基本的に規定するが,制度の転換点となるような危機的状況下では制度設計者の信念(価値合理的行動)が「転轍手」となって制度変化を主導することになる(可能性がある)ということである。さらに,FASB設立以降,会計制度変化の概念的アンカーとして位置づけられてきた資産負債アプローチの役割と論理構成の変遷について検討した。その結果,資産負債アプローチは,コンバージェンスの展開過程において,定義のみを制約する会計観から,認識・測定をも制約する会計観へと変質していることが明らかになった。さらに,以上の研究を通じてえられた知見を一般化する試みとして,非営利法人における会計制度変化(公益法人会計基準の改訂を契機とする非営利法人会計基準統一化の可能性)や会計学研究の方法(実証研究の方法論的基礎)に関する検討も行った。
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Research Products
(8 results)