2009 Fiscal Year Annual Research Report
会社法・金融商品取引法における財務報告と投資家行動に関する実証研究
Project/Area Number |
20530409
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
音川 和久 Kobe University, 経営学研究科, 教授 (90295733)
|
Keywords | 会計学 / 大量保有報告制度 / 投資家行動 / 無形資産集約的企業 / 情報の非対称性 |
Research Abstract |
研究期間の2年目にあたる本年度は、金融商品取引法の開示制度である大量保有報告制度の有効性を検討するために、(1)短期的な株価反応、(2)将来リターンの予測可能性、(3)投資スタイルという3つの視点から実証分析を試みた。そして、(1)平均的にみれば、大量保有報告書または変更報告書を通じて情報開示された大株主の株式取引行動に対して、市場が有意に反応していること、(2)大株主がすでに株式を所有しているケースについて、その銘柄を買い増した場合には株価が上昇し、反対に処分した場合には株価が下落するという傾向が観察されることから、大株主の株式取引行動には平均的にみれば将来の株式リターンを予測できる能力が備わっていること、および(3)大株主は、株価が直前になって上昇した銘柄を購入し、直前になって下落した銘柄を売却する傾向があることから、大株主の株式取引行動は平均的にみればモメンタムまたは順張りと呼ばれる投資家行動と一致することを析出した。この研究は、金融商品取引法のディスクロージャー制度である大量保有報告制度の有効性を実証分析した先駆的な研究である。さらに、インサイダーがコントラリアンまたは逆張りと呼ばれる投資家行動をとっていることを発見している欧米の実証研究とは対照的な結果であることから、証券市場の規制当局や市場参加者にとって非常に興味深い証拠を提供している。 さらに、証券市場の公平性・透明性を高め、投資家を保護するために、様々な施策が導入されてきたにもかかわらず、研究開発投資を積極的に行っている無形資産集約的な企業では、依然として、企業価値を評価するための開示情報に不備があり、個人投資家や機関投資家など様々なタイプの投資家の間に有意な情報の非対称性が残されており、市場の流動性が低いことを析出した。
|
Research Products
(3 results)