2010 Fiscal Year Annual Research Report
環境会計情報に基づく株式ポートフォリオの収益性に関する分析
Project/Area Number |
20530410
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
朴 恩芝 香川大学, 経済学部, 准教授 (00345860)
|
Keywords | 環境会計 / 経営戦略 / 投資意思決定 / 環境負債 / 企業属性 |
Research Abstract |
本年度の研究では、日本企業による環境への投資が、法的・道徳的な社会的責任の域だけでなく、企業の重要な戦略行動であることを、財務的視点から検証するため、企業行動を決めるいくつかの企業属性と関連づけた実証分析を行った。そこでは、とりわけ環境コストであらわされる企業の環境投資行動を戦略的に考える際に、影響を与えると想定される収益性、研究開発費、広告宣伝費、負債の4つの企業属性をとりあげている。 もちいられた企業属性が有意に環境コストの大きさと関連している企業は、その属性を考慮して、戦略的に環境コストを投じていると判断する。結果としては、収益性と広告宣伝費及び負債の属性において、環境投資への戦略的行動が明らかになった。つまり、企業の環境投資行動が、収益性はもちろん、広告宣伝費については代替効果を、また負債については資産の担保価値の維持及び将来における環境負債発生の抑制のために、負債のモニタリングを戦略的に考慮した結果であることが証明できた。現在、外部環境の著しい変化に直面する企業が、経済危機と環境保全という2つの課題をどのようにクリアするかについて、企業戦略としての環境行動が重要な鍵となることを、この分析結果から強く読み取ることができる。 その一方で、環境会計を取り巻く制度的な変動にも引き続き注目した。そこでは、環境情報の計上可能性の側面でも注目されている「資産除去債務の会計」について検討したうえで、なかでも環境負債と関連して、資産除去債務の開示が企業の環境行動にどのような影響を与えるのかを考える。現在、地球レベルでの環境保全活動が求められており、今後より多くの環境情報が財務諸表上の項目として取り入れられる可能性は高くなるだろう。企業のリスクマネジメントが注目されるなか、環境リスクはリスクの発生可能性や負担額の規模、そして何よりも社会の関心から、より重要な位置に置かれる。
|
Research Products
(3 results)