2009 Fiscal Year Annual Research Report
内部統制監査における保証水準の確保に関する理論的及び実証的研究
Project/Area Number |
20530411
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
井上 善弘 Kagawa University, 経済学部, 教授 (60253259)
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Keywords | 会計学 / 監査論 / 内部統制監査 |
Research Abstract |
本研究「内部統制監査における保証水準の確保に関する理論的及び実証的研究」は,内部統制監査において監査人が「監査」としての保証水準を担保するために必要な理論的・実務的な基盤を得ることを目的とする。平成21年度の研究成果の中心は,我が国の内部統制報告制度において監査人により作成され,公表されている内部統制監査報告書の特徴に関するものである。具体的な成果物として,下記の雑誌『商経学叢』第56巻に掲載された「内部統制監査報告書の特徴について」を挙げることができる。我が国の金融商品取引法に基づく内部統制監査では,監査人は,財務報告に係る内部統制の有効性それ自体ではなく,財務報告に係る内部統制の有効性に関して経営者の作成した内部統制報告書に対して意見を表明する。しかしながら,内部統制報告書は投資者にとって直接的な関心の対象とは言えない。投資者にとっての直接的な関心事は財務報告の信頼性,ないし財務報告に係る内部統制の有効性であり,内部統制報告書に対する監査意見は,投資者の立場からするとそれらについて間接的なメッセージを与えるものでしかない。また,監査意見の種類とそれが表明される状況によっては,監査意見の持つ意味が投資者に十分に伝わらない危険性がある。このような監査意見の投資者に対するメッセージとしての不十分さを補うのが追記情報である。 監査人の責任と表裏の関係にある監査意見が持つ意味の重さや,追記情報が本来負うべき役割を鑑みれば,我が国の内部統制監査制度が内部統制監査報告書において追記情報に負わせようとするとする役割は,非常に重いものと言わざるを得ない。
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