2010 Fiscal Year Annual Research Report
内部統制監査における保証水準の確保に関する理論的及び実証的研究
Project/Area Number |
20530411
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
井上 善弘 香川大学, 経済学部, 教授 (60253259)
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Keywords | 内部統制監査 / ダイレクト・レポーティング / リスク評価 / 究極的要証命題 / 財務諸表監査 |
Research Abstract |
本年度は,下記に挙げた論稿「内部統制監査における究極的要証命題の立証構造~ダイレクト・レポーティングの場合~」において,ダイレクト・レポーティングの形で実施される場合の内部統制監査における究極的要証命題の立証構造の特徴を,アメリカの監査基準第5号「財務諸表監査と統合された財務報告に係る内部統制監査」(以下AS5号という。)を検討することを通じて解明する試みを行った。その結果,当該立証構造の特徴として着目したのは,そこで採用されているアサーションベースのリスク評価アプローチである。ここでアサーションとは,財務諸表における重要な虚偽表示をもたらす原因となる虚偽表示または複数の虚偽表示が含まれる可能性のある財務諸表上のアサーションをいう。この関連するアサーションを識別するために,監査人は財務諸表の個別項目及び開示に関連する質的及び量的なリスク要因を評価しなければならないが,当該リスク要因は財務諸表監査の場合と同様であるとされる。したがって,関連するアサーションは内部統制監査の場合と財務諸表監査の場合とで同じということになる。内部統制監査においては,テストの対象とすべき内部統制をどうやって選定すべきが極めて重要となるが,AS5号はその選定の基礎に関連するアサーションに係るリスク評価を置いていることになる。このように,テストすべき内部統制を関連するアサーションに係るリスク評価に基づき選定することで,関連するアサーションを通して財務諸表監査と内部統制監査が有機的に結合することになる。本来,財務報告に係る内部統制が有効であるか否かは,それが財務諸表におけるアサーションに存在する可能性のある重要な虚偽表示を防止または発見できるかどうかによって判断されるべきである。したがって,関連するアサーションに係るリスク評価に基づいた内部統制の選定は,内部統制監査の目的に適うアプローチであると言える。
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