2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530414
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
角ケ谷 典幸 九州大学, 大学院・経済学研究院, 准教授 (80267921)
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Keywords | コンバージェンス / 公正価値 / 現在価値 / 当期純利益 / 包括利益 / 日本の会計 / リース |
Research Abstract |
本研究は、「公正価値」、「コンバージェンス」および「日本の会計」の相互関連性を、公正価値会計の浸透過程の解明、国際財務報告基準(IFRS)への収斂過程の解明、および日本の会計思考の探求などを通じて明らかにしようとするものである。本年度は、公正価値会計および現在価値会計の総合的研究、およびリース会計を題材にした会計基準設定過程の研究に従事し、研究成果の一部を論文や学会報告等の形でまとめた。本年度の研究から得られた知見はおおむね次の通りであった。 公正価値や現在価値が無条件に投資意思決定に資するという国際会計基準審議会(IASB)の理念に会計制度が必ずしも追随しているわけではない。会計制度を詳細に観察すると,当初認識時の測定,当初認識後の測定,いずれにおいても,公正価値や現在価値の適用は限定的である。投資家保護という名のノーマティブな変革圧力は認められるが,制度の前提(とりわけ日本の伝統的な会計思考)は存続している。会計基準や測定属性の国際的統一は必ずしも各国の会計制度の統一を意味しない。 コンバージェンスの過程で、日本企業には所有権移転外ファイナンス・リース取引のオンバランス化が強制された。また、IASBはリース取引のオンバランスの範囲をオペレーティング・リース取引にまで拡大させる方向で議論を進めている。これらの変更の狙いは、会計処理を国際的に画一化し、経営者の裁量の余地を狭めることである。しかし、会計基準の統一は必ずしも会計制度の統一につながっているわけではない。日本では、統一化の流れ反する形で、重要性の原則に基づくオフバランス処理の容認や簡便的処理(利子込み法。所有権移転外ファイナンス・リース取引に関する部分適用)が認められた。 以上、本年度の研究は、会計処理の国際的統一・画一化が必ずしも各国の比較可能性やディファクト・コンバージェンスに結びつかないことを明らかにした。
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Research Products
(4 results)