2008 Fiscal Year Annual Research Report
企業買収による価値創出プロセスに関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
20530420
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
高橋 邦丸 Aoyama Gakuin University, 経営学部, 教授 (10276016)
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Keywords | 会計学 / 経営学 / 企業買収 / 経営者の裁量行動 |
Research Abstract |
わが国では1990年代後半以降にM&A取引が活発化しているが、M&A戦略が企業業績に及ぼす影響や経営者行動に及ぼす影響についてはまだ明らかにされていない部分が多い。欧米の先行研究において、M&Aに関連した株価効果や企業業績への影響については、それが買収企業かターゲット企業であるかで異なるほか、取引形態や買収対価の支払手段の違い、敵対性の有無、コンテストの有無など様々な要因によって影響を受けるとされ、個々の要因が与える影響についてはいまだに分析が進められている最中である。そこで本研究では、わが国の法制度改革がM&A取引に重要な影響を及ぼした1999年の株式交換制度・株式移転制度に着目し、買収対価の支払手段の違いが経営者の戦略策定や裁量行動にどのような影響を及ぼしたかについて実証研究を行った。本分析の意義としては、欧米の先行研究と異なり敵対的買収やコンテストが少ないため、法制度改革によって買収対価の支払手段の選択肢が増加するといった要因に絞って実証研究を行うことが可能となったことがあげられる。分析の結果、買収対価の選択の動機、買収対価の支払手段の選択肢が得られたことによってM&A取引の増加がもたらされたこと、さらには現金取引と比較して株式交換取引において経営者の裁量行動が顕著にみられたことなどが明らかとなり、これらを英文にて公表をおこなった。また、買収アナウンスから2年以上の期間を経て合併を行った第一三共株式会社やベンダーマーケティングといった新業態で業績を伸ばしているアイリスオーヤマ株式会社に対してインタビュー調査を行い、買収後の戦略方針、マネジメント・スタイルの変更、および期待されるシナジー効果と企業業績への影響について分析を行った。とりわけ本研究課題の重要項目であるM&Aによるシナジー効果については、実際の戦略策定上どのような効果を期待しているのか明確とされていないが、今回その分類や認識方法などについては実際のデータをもとに分析するという機会が得られた。その成果の一部は、中央大学企業研究所にて報告を行っている。
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