2009 Fiscal Year Annual Research Report
企業買収による価値創出プロセスに関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
20530420
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
高橋 邦丸 Aoyama Gakuin University, 経営学部, 教授 (10276016)
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Keywords | 企業買収 / 経営資源 / 利益持続性 / 固定顧客 |
Research Abstract |
本年度は、日本企業のM&A戦略について下記の3点から分析を行った。まず、日本企業のM&A戦略について資源ベースの観点から分析を行った。具体的には、これまで企業が保有する経営資源やケーパビリティの移転や共有といった観点からの分析がなされてこなかったことを指摘したうえで、M&A戦略によって持続的競争優位を獲得するためには資源移転の方向性を考慮した分析が重要であることを述べている。二つ目として、日本企業のM&A戦略のグローバル化について、買収企業が国内外の企業を買収した場合とで企業業績に異なる影響を及ぼすか否かについて実証研究を行った。これまでターゲット企業が国内企業か否かで買収企業の業績が異なるかについて、短期的なリターンを用いた分析がなされているものの、M&Aの成果について会計指標を使った長期的な観点から測定するといった研究はほとんどなされてこなかった。そこでクロスボーダーM&Aあるいは日本国内企業同士のM&Aを実施した248社をサンプルとして、主として収益性にどのような違いをもたらすかについて分析を行った。分析の結果、株主資本利益率(ROE)については、両者間で顕著な違いが見られなかったものの、ROEの構成要素レベルでは買収前後およびターゲット企業の違いによって長期業績に異なる影響を及ぼすことを明らかにした。三つ目として、顧客関係性を重視するために企業が仕入先を集約化し、それらとの協力関係を構築するためにどのようにM&Aが利用されているかについて分析するために、顧客関係性戦略と企業業績との関係について実証研究を行った。具体的には、有価証券報告書に記載されている主要顧客に関する情報を用いて、特定の顧客との取引を重視する戦略と企業業績との関係について実証分析を行い、主要顧客情報の有用性や主要顧客比率の大きさによってサプライヤーの業績に違いが見られることを明らかにした。
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