2010 Fiscal Year Annual Research Report
企業買収による価値創出プロセスに関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
20530420
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
高橋 邦丸 青山学院大学, 経営学部, 教授 (10276016)
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Keywords | 企業買収 / 企業価値創造 / 顧客関係性戦略 / 株式保有 / 企業業績 |
Research Abstract |
今年度は企業買収の目的の1つである売り手企業と買い手企業間の長期的な取引の継続や協調的な関係構築によってもたらされる価値創造について理論的および実証的分析を行った。売り手企業と買い手企業の関係といった組織間における良好な関係構築は企業価値創造に影響を及ぼすとされているが、このような関係性重視の戦略行動が企業業績とどのような関係にあるかについて客観的なデータを用いた実証研究はそれほどなされてこなかった。本研究では、有価証券報告書に記載されている主要顧客に関するデータを用いて取引関係性重視の戦略がサプライヤー企業および主要顧客企業双方の業績にどのような影響を及ぼすかについて分析を行った。 分析の結果から、日本の製造業において約3割弱の企業が複数のサプライヤー企業の主要顧客となっており、かつその関係が複数年に及んでいることが明らかになった。そしてこのような関係性の構築に伴って、主要顧客が購買パワーを持つことが可能になり低価格で仕入活動を行っているという結果が示された。一方、サプライヤー企業については、顧客志向の戦略を重視する企業のほうがより販管費等のコスト削減が可能であることや棚卸資産回転率や売上債権回転率が高いという結果が示された。これらの結果から、売り手企業と買い手企業間の関係構築によるメリットは主要顧客企業だけでなく、サプライヤー企業についても見られることが明らかになり、企業買収におけるターゲット企業の選定に有用な情報となることがわかった。 また、顧客関係性戦略を強化することやリスクを低減することを目的として行われる主要顧客企業によるサプライヤー企業の株式保有行動についても分析を行った。分析の結果から、主要顧客企業による株式保有行動が棚卸資産回転率などの効率性指標と正の関係にあることが示され、部分的にではあるが主要顧客企業による株式保有が主要顧客企業の業績に正の影響を及ぼすことが明らかになり、企業買収行動による価値創造を説明する一助となる結果が示されたものといえよう。
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Research Products
(5 results)