Research Abstract |
当年度は,前年度の構築した,アメーバ経営システムと組織成員の心理に関する分析モデルを,ダイヤモンド電機(株)の従業員から得たデータをもとに検証した。具体的には,下記のとおりである。 (1) 2010年6月17日(木)に同社の経営管理本部副本部長の安藤武始氏を訪問し,モデルや質問調査票の妥当性についてご意見をうかがい,それを受け,若干の質問票の修正を行った。 (2) 2010年7月に,ダイヤモンド電機(株)の全従業員975名に対して,アメーバ経営システム導入前の心理的傾向を探る質問票調査を実施した。 (3) 2011年2月に,(2)の質問票調査の結果(集約されたデータの一部)について,ダイヤモンド電機(株)の安藤氏に対してフィードバックを行った。 (4) 2011年3月に,ダイヤモンド電機(株)の契約社員を除く全従業員761名に対して,アメーバ経営システム導入後の心理的傾向を探る質問票調査を実施した。 (5) (4)の質問票調査によって得られたデータに基づき,分析モデルを実証的に検証した。その結果,明らかにされたことは次のとおりである。すなわち,アメーバ経営システムは,その会計情報上の特性ならびに運営方法上の特性を通じて,組織成員の自己効力感,チーム効力感,ならびに自律的動機づけに影響を及ぼし,間接的に組織内・組織間のインタラクションを引き起こし,もってチームのパフォーマンスを促進している,ということである。 アメーバ経営システムが,いかなるメカニズムを通じて,組織成員の心理あるいは行動に影響を及ぼしているのかについては,必ずしも十分に明らかにされてはいなかった。しかし,本研究を通じて,そのメカニズム解明の端緒が得られた。今後は,より詳細にその解明を行う必要はあるが,本研究によって,より適切かつ円滑なアメーバ経営導入の可能性が高まり,日本企業の競争力向上に資することができるものと思量する。
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