Research Abstract |
平成22年度,我々は,武漢中南財経法政大学会計学院,武漢大学経済管理学院,上海経隆会計事務所,プライスウォーターハウス上海事務所,中国公認会計士協会と北京国家会計学院を訪問し,「中国会計士人材育成」と「会計事務所の国際化」を中心に調査し,日中両国の監査研究領域における現状と課題など,学術交流を行った。 中国政府は2009年3月IAASBクラリティ・プロジェクトに応じた継続的コンバージェンスを行い,2010年11月に改正後の38基準を一斉に公表した。中国の会計・監査基準設定方式は,政府(官)が舵を取り,外交,経済資源,人材資源など,産官学のあらゆる資源を集中して基準を設定・改定するということである。しかし,2012年からの新基準を実施するにあたって,基準と実務界に大きな"ギャップ"があるために,どのようにしてこれを埋めるかという課題が残っている。 一方,日本は,その基準設定に当たって,企業会計審議会と日本公認会計士協会が,"デュープロセス"において,慎重に審議し,公開草案を経て,監査基準を発表している。中国と対照的に,産官学のなか,「学」(大学教授・研究者)と「産」(日本公認会計士協会と経済界代表)が基準改正の主導権を握っているともいえる。 このように,監査基準コンバージェンスにあたって,先進国の日本と新興国の中国と比較すると,今日グロバール化の国際政治の舞台において,効率性という観点からは,中国のような政府主導モデルのほうがベターとも言える。しかし,それは,日本では採用できないアプローチである。
|