2009 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおけるトランスナショナルなメディアと文化に対する社会学的研究
Project/Area Number |
20530454
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
毛利 嘉孝 Tokyo National University of Fine Arts and Music, 音楽学部, 准教授 (70304821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩渕 功一 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (10327728)
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Keywords | 東アジア / メディア / 文化 / グローバル化 / J-pop |
Research Abstract |
三年計画の二年目である今年は、昨年に引き続き東アジアのメディアの状況(特にテレビと音楽)について基本的な情報を集約しつつ、アジアの研究者間の意見交換を行いながら、文献調査と聞き取りを中心に調査研究を行った。この二年間の調査研究で得られた知見はおおよそ次の5点にまとめられる。 1)日本文化が東アジアを席巻した1990年代、韓流が広がった2000年代を経て、この20年の間にアジアの文化の/文化を通じた「地域化(regionalization)」が確実に進行している。 2)各国間の文化交流・文化変容は、初期の熱狂的な時期を過ぎて、一定のおさまりを見せている。とりわけ、文化産業の中で各国にノウハウの受容や定着が見られ、国内市場のための国内生産に回帰している側面もある。 3)中国市場の拡大と新中流階層の出現を受けて、中国(特に香港・台湾)や韓国では、中国市場に対する積極的な方策が取られている。また中国政府は急速に文化産業の保護・育成に取り組んでいる。 4)韓国政府の日本文化規制は、民主党政権誕生を受けたこと、韓国の競争力が高まったこと、植民地時代の記憶が(幾分)和らぎつつあることから、韓国内では弱まるとの観測が広がっている。 5)デジタル化、インターネットの発達により、産業構造が大きく変化する一方で、個人レベルの文化交流や文化変容、市場経済に属さない大衆文化の交流が活発化している。 研究の進捗状況は、テクノロジーの発展による産業全体の変化が、当初に計画していたよりも早く進んでいるので、状況の把握に苦労して面もあるが、幸い中国・韓国における協力者や協力研究組織にもめぐまれ、順調に進んでいる。 国際的なレベルでの研究発表を論文発表や学会でも行い、国内外でも一定の評価されており、最終年度に向けて大きな成果を上げつつある。
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