2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530461
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鶴巻 泉子 Nagoya University, 大学院・国際言語文化研究科, 准教授 (70345841)
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Keywords | 社会学 / 地域主義 / エスニシティ / 移民 / フランス |
Research Abstract |
本研究はフランスのブルターニュとアルザスを例に、両地域が1990年代以降に見せる「新しい地域主義」の社会的志向性を、地域の「内側のマイノリティ」としての移民の統合問題に着目して考えようとするものである。研究二年目にあたる本年度は、ブルターニュにおけるポンタネゼン地区、アルザスのニューオフ地区で調査をすると共に、スペインのカタルーニャ(特にバルセロナ)において移民アソシエーション・地域文化普及団体を中心に聞き取り調査を行った。ブルターニュよりも移民問題が社会的に注目を浴びているアルザスでの調査は現在難しくなっており(市当局や警察関係者の介入)、制度的アクターへのインタビューや資料収集が今年度は思うように進まなかった。したがって、市レベルでの政策や警察・司法の態度を含めた、両地域での総合的な移民地区の比較がまだ十分でない。この点、来年度の大きな課題としたい。また、フランスでの地域主義と移民統合のあり方との比較をするために、この分野で度々「模範例」として取り上げられているカタルーニャで調査・文献収集を進めた結果、カタルーニャ自治政府当局が宣伝している「移民のカタルーニャ文化への統合」政策は、実際には極めて紛争性が高い問題であることが分かった。つまり、「移民はスペイン人にならなくともカタルーニャ人になれる(なればよい)」と考える自治政府当局と、実際に移民地区で活動する移民主体のアソシエーションやカタルーニャ文化を移民に積極的に広げようとするカタルーニャ文化団体との間には、統合の諸問題をめぐって大きな認識的乖離が認められた。この乖離の具体的検討、そしてフランスの問題との接合点を具体的に探ることが、来年度の大きな課題となる。
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Research Products
(1 results)