2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530461
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鶴巻 泉子 名古屋大学, 大学院・国際言語文化研究科, 准教授 (70345841)
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Keywords | 社会学 / 地域主義 / エスニシティ / 移民 / フランス |
Research Abstract |
本研究はフランスのブルターニュとアルザスを例に、両地域が1990年代以降に見せる「新しい地域主義」の社会的志向性を、地域の「内側のマイノリティ」としての移民の統合問題に着目して考えようとするものである。最終年度にあたる本年度は補完的調査の続行と論文執筆が主要な目標であった。調査の一つが事故のためできなくなるというアクシデントがあり、そのため特に警察・司法関係者に十分な話が聞けなかったという不十分さは残るが、昨年度までの研究で浮かび上がった問題を実証的に深めることができた。すなわち、ブルターニュとアルザス地域において、政党や活動家の言説を通して浮かび上がる「ソシエタルな地域主義志向性」と「エスニックな地域主義志向性」という対立軸は、移民の統合という社会問題においてはそれほど鮮明には見えてこないということであり、地域文化と移民がもたらす文化の問題は移民地区のアソシエーション活動を通じてはっきり分断されているということである。フランスの地域文化はエスニックな紛争性を失い、個々人のレベルにおいてむしろナショナルな価値を補強する、商品化されたエスニシティを提供する。移民地区での「多文化主義的統合」を鼓舞する活動を展開する様々なアソシエーションにも、移民(特に北アフリカやブラックアフリカ出身)がもたらす文化を別個の次元のものとして扱う傾向が見られた。カタルーニャでの調査に照らしても、このような傾向はフランスに特有であり、Hussein & Muller(2006)やA.Henderson(2007)の指摘するケベックやスコットランドの例と大きな隔たりを見せている。この要因についてはより詳細かつ慎重な分析を必要とするが(:現在論文を執筆中)、その一つとしてのナショナルなメディアの関わりについてはすでに成果を発表した(Tsurumaki,M.,2010)。
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Research Products
(2 results)