2011 Fiscal Year Annual Research Report
シリコンバレーの変容と地域イノベーションモデルの再構築
Project/Area Number |
20530491
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
京谷 栄二 長野大学, 環境ツーリズム学部, 教授 (90195397)
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Keywords | 地域 / 発展類型 / シリコンバレー / IT産業 / アジア / 中国 / 台湾 / ヴェンチャー企業 |
Research Abstract |
1990年代末ITバブル崩壊後のシリコンバレーの衰退は現在も進行し、カリフォルニア州全体で製造業とコンピュータ産業の就業者数はバブル期に比べ三分の一強減少している。 他方アジア諸国のIT産業は発展し、2000年代初頭の情報サービス市場をみると世界市場の成長に対して中国は約10倍、インドは約5倍の成長を達成している。インドの情報サービス産業は北米を中心に輸出されている。また台湾のIT産業も急成長し、近年世界市場の上位を占める。ITバブル崩壊後のシリコンバレーの衰退は、アジアのIT産業新興地域へ事業と雇用が流出した空洞化の結果である。 本年度は、アジアのIT産業新興地域の現地調査の情報を分析し、以下のように発展モデルの相違を解明した。 台湾では日本の植民地支配から独立した戦後、政府主導で産業が育成され、1980年代以降のIT産業育成も同様であった。政府は1980年台初頭、台北の新竹を皮切りに、居住地・商業地・大学等教育研究機関が一体となった科学技術圏区の開発を進め、現在では台中、台南にも科学技術圏区が設置され、先端産業発展の基盤となっている。 中国では1979年の改革開放以降市場経済の発展が推進された特殊事情に規定されて、IT産業は国立の大学や研究機関を拠点に形成され、これら国立機関発のヴェンチャー企業がIT産業の中心を担っている。 起業家の活躍を推進軸に発展したシリコンバレーのIT産業とは異なり、台湾と中国のIT産業は国家が主体となった。現地調査を踏まえた国際比較により発展類型の違いを発見した点は、従来の研究にない独自性である。 また社会学の現代的意義を考察するため、本年度はパブリック・ソシオロジーの国際論争を総括し、(1)グローバリズムと市場原理主義による災禍の分析と改革には有効な方法であること、(2)この実践的な性格のゆえにウェーバーの「価値自由」の問題に回答すべきことを明らかにした。この研究も他にない独自なものである。
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Research Products
(2 results)