2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530494
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
井上 眞理子 京都女子大学, 社会学部, 教授 (50137171)
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Keywords | 子による家庭内暴力 / ストレッサーへの2段階適応モデル / 家族システム論 / 適応失敗的暴力 / 規範同調的暴力 / 表出的暴力 / 入れ子型エコロジカル理論 / 民間団体 |
Research Abstract |
子ども虐待発生メカニズムとそれへの対応・防止を考えた申請者の先行研究において考案された「ストレッサーへの2段階適応モデル」を、子による家庭内暴力に適用しようというのが本研究の目指すところであった。まず理論的考察の部分では「ストレッサーへの2段階適応モデル」をも含む家族システム論的アプローチの有効性と限界を明らかにし、その限界を超えるものとしてのNested Ecological Theoryについて検討した。有効性については平成16~17年度、平成18~19年度の科学研究費補助金による研究ですでに明らかであるが、限界としては以下の点が挙げられる。家族システム論では、暴力はストレッサーへの対処・適応の機能不全により発生する<ネガティブ>な結果であるが、そうでないものすなわち価値・規範に同調した<ポジティブ>な結果としての暴力(例えば体罰肯定的文化)や、また弱者の怒りや憎しみを直接的に表現した粗野なメッセージ(M.ヴィヴィオルカの言うところの「表出的暴力」)としての暴力も存在する。家族システム論にはこのような暴力を適切に取扱うことができないという限界がある。 このような家族システム論の限界を踏まえ、Nested Ecological Theory(入れ子型エコロジカル理論)について検討した。この理論では、家族システムは相互作用する4つのシステムすなわちマクロシステム(全体社会の文化・価値・規範)、外システム(社会構造的要因)、ミクロシステム(家族内相互作用のパターン)、個体発生的要因の一つに位置づけられている。このような理論的枠組みのもと、少年による家庭内暴力の問題に取組む全国の民間団体から65団体を無作為抽出し、家族の特性や助言・指導について質問紙調査を行い、現在結果を分析中である。
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Research Products
(4 results)