2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530496
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
寳月 誠 Ritsumeikan University, 産業社会学部, 教授 (50079018)
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Keywords | 組織体逸脱 / 食品企業の逸脱 / コントロールバランス / 逸脱的機会・資源 / 問題状況 |
Research Abstract |
本年度は組織体逸脱に関する理論の文献収集と日本の食品企業の逸脱の事例分析を行った。文献収集では組織体逸脱・ホワイトカラー犯罪の理論に関する基本的な資料のサーベイをほぼ終えることができた。その上で、独自な理論的展開を図るためにおこなった食品企業の逸脱事例の研究から、以下の仮説を得た。 1.企業やその担当者は企業経営上の問題状況に直面したときに、その解決策のひとつとして逸脱を選択する可能性が高まる。 2.問題状況の解決には「資源や機会」が重要であるが、企業やその担当者は利用可能な「合法的機会・資源が不十分」であったり、「逸脱的な機会・資源が多い」場合に逸脱しやすい。 3.以上の条件だけでなく、コントロールバランスが組織体逸脱に関係してくる。すなわち「コントロールバランスの不均衡な状況」に置かれている企業や担当者ほど逸脱しやすい。 4.問題解決に利用可能な合法的機会・資源があっても、「するコントロール」が「されるコントロール」をはるかに凌駕する企業は、合法的機会を「悪用する」可能性が高い。 5.問題解決に利用できる機会・資源に乏しく、強く「コントロールされる」位置にある企業ほど、「他者からの逸脱の要請」を受け入れやすい。 6.自らの「コントロールの不均衡」を回復することを願っている企業や担当者は、たとえそれが「逸脱的な資源・機会」であっても、活用したくなる誘惑を感じる。 7.問題解決に利用できる資源・機会に乏しく、他者から「コントロールされる」量の少ない状況にある企業や担当者は、自らの「ミス」を見逃しやすく、事故や被害を引き起こしやすくなる。 8.結局、企業逸脱が生じにくいのは、問題状況に直面することが少ない市場環境に位置し、問題解決に利用可能な資源・機会に恵まれ、さらにコントロールバランスの取れている社会空間にある企業である、と仮定される。
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