2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530496
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
寳月 誠 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (50079018)
|
Keywords | 組織体逸脱 / 企業犯罪 / 食品企業 / 企業逸脱に関する命題 |
Research Abstract |
組織体逸脱、特に食品企業の逸脱を対象としてこれまでおこなってきた研究から見出した仮説の検証を行い、再定式化を試みた。第1に新たに企業逸脱の事例(25ケース)を収集し、当初の仮説を否定する事例が存在するのかを検討し、第2にアメリカの企業逸脱・ホワイトカラー犯罪の最新の研究成果を参照して、仮説の妥当性や一般性を検証した。その結果、本研究で到達した組織体(特に企業)逸脱の生成に関連する一連の要因は、以下のような命題に集約することができる。 (1) 企業は逸脱の「誘因」が制度や市場から与えられたり、あるいは経営上の「問題状況」に直面する状況において、逸脱を選択する可能性が増す。 (2) こうした状況で企業が逸脱するか否かは、企業の行為者の「状況の定義」に左右されるが、積極的に逸脱を肯定するというよりは、「やむを得ない」という判断や「高をくくる」状況の定義を組織内で形成されてきた結果である。 (3) 企業が逸脱行為を実行するには、逸脱に必要な資源(ノウ・ハウや関係者とのネットワーク)や組織構造(権力・報酬システム)を有していなければならない。 (4) 企業行為には組織内外の社会的コントロール(制度と企業道徳、社会的評価)が影響を及ぼすので、これらコントロールが効果的でないほど、企業逸脱は促進されやすい。 (5) 企業逸脱はプロセスとして捉える必要がある。その発端・継続・発覚・累犯の各局面において主要な影響を及ぼすものがどのような要因であるのかを見出す必要があるが、特に発覚の局面で重要なものは「内部告発」であることが判明した。企業逸脱を「抑制」する観点からは、この知見を活かしていくことが重要となる
|