2010 Fiscal Year Annual Research Report
「福祉地理学」の構築と「持続可能な福祉コミュニティ」に関する研究
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20530502
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
廣井 良典 千葉大学, 法経学部, 教授 (80282440)
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Keywords | 福祉地理学 / コミュニティ / 福祉 / 福祉政策と都市政策の統合 / 地域再生 / 地域内経循環 / 定常型社会 |
Research Abstract |
本調査研究は、福祉の分野に「地理」あるいは空間(ないし場所、土地)の視点を導入するとともに、「持続可能な福祉コミュニティ」とも呼ぶべきモデルを構想していくことを内容としている。こうした問題意識を踏まえ、平成22年度においては全国の自治体を対象とする「地域再生・活性化に関するアンケート調査」を実施し(対象は(1)全国市町村の半数(無作為抽出)及び政令市・中核市・特別区で計986団体、(2)全国47都道府県に送付し、(1)については返信数597(回収率60.5%)、(2)については返信数29(回収率61.7%)、特に「都市政策と福祉政策の統合」、地域内経済循環、成長・拡大志向と定常化志向、地域の自立と再分配といった観点から分析を行い、今後の政策の基盤となる考察や提言をまとめている。特に、(1)大多数の市町村が「成長・拡大」よりも「定常型」の地域社会モデルを志向していること、(2)ローカル化とグローバル化という二つの方向については自治体の規模によって差が見られること、(3)地域における優先課題は大都市圏、地方都市、農村部で大きな違いがあること、(4)高福祉・高負担か低福祉・低負担かという選択を今後は自治体において議論していく必要があること、(5)地域の「自立」のためには、大都市と地方・農村部の間にある不等価交換的な構造を是正すべく何らかの再分配政策が求められるべきこと、等の点が分析と考察の結果得られた知見である。これらの結果は今後の地域再生・活性化政策のみならず、震災を受けた後の日本社会における地域コミュニティのあり方や政策立案においても意義を有するものと考えられる。
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