2010 Fiscal Year Annual Research Report
相談の社会化と子ども虐待のない福祉コミュニテイの形成に関する実証的研究
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20530504
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鈴木 昭 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30401756)
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Keywords | 子ども虐待防止 / 相談の社会化 / 福祉コミュニティ / 要保児童対策地域協議会 / 相談行動 / ミクロ・メゾ・エクソレベル / ソーシャルキャピタル / パワレス |
Research Abstract |
要保護児童対策地域協議会を核とした子ども虐待のない地域社会づくりを児童家庭福祉領域における福祉コミュニティ形成の過程としてとらえ,要保護児童対策地域協議会設置後の地域の変化について、全国児童相談所及び政令市区(旧市町村相当)を対象に郵送(回収率60%、N=45)、現地聞取り(7か所)により調査し次の結果を得た。1)要対協の3層構造会議の年間における開催頻度(いずれも中央値)は、代表者会議1回、実務者会議8回、個別ケース会議16回で、実務者、個別ケースの2会議について「うまく機能している」と評価していたが、代表者会議については形骸化している等の理由により機能していないの回答が多く、その運営の課題が明らかになった。2)要対協の運営形態と設置後の地域の変化の関連をみていくと、人口規模、設置後の経過年数(平均3.6年)、個別ケース会議の開催頻度とは有意差が認められなかったが、代表者会議では年1回開催群が複数回開催する要対協より「関係機関同士の隙間がなくなった」、実務者会議の頻度では、開催回数が多いほど「機関連携がすすんだ」と肯定的変化が統計的に確認された。また、児童相談所に比して政令市区では、「総合的支援が可能になった」、「関係者の負担が軽減した」ととらえていた。さらに地域の変化を問う17項目同士の相関係数を求めその関連について検討した。この結果、要対協を核とした子ども虐待のない福祉コミュニティの形成に有用と考えられる次の知見を得た。3)地域の主な変化として、(1)機関連携がすすみ、「初期段階から連絡を取り合い」、その結果「関係機関の隙間がなくなり」、「連帯感がうまれ」、地域の「アセスメントカが向上し」、「市町村が主体的に取り組む」ようになった。このことは(2)「たらい回し」がなくなり、(3)「問題を共有し、負担感の軽減」を促し、「全般的に援助の質があがり」、「失われた地域の相互互助の取り戻し」の機運醸成につながる。(4)一方、「子ども虐待の発見する機会が増えた」では、他のどの項目とも関連が認められなかった。上記のような地域の取り組みにも関わらず、子ども虐待の早期発見の難しさを示している、ものと考えられる。(5)変化を尋ねた項目で相互に関連が多く認められた項目は、「初期段階から連絡を取り合う」「援助の質があがった」「問題を共有し負担感軽減」「個人の対応力が向上した」であった。
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