Research Abstract |
本研究の目的は,教師に期待される「児童を引き上げる指導性」と「児童を受け入れる指導性」という,矛盾・対立した二つの指導を教師が無理なく同時に実践できる新たな指導方略を提起して,教師の学級経営力向上に活用できる理論的・実践的研究をおこなうことにある。このため,平成21年度は,従来の研究では注目されなかった新たな指導方略を掘り起こすために,従来の指導行動研究の成果について資料収集・整理による理論探究と仮説構築を行う一方で,以前からおこなっている小学校の学級活動観察と教師へのインタビューによって収集・カテゴリー化した指導方略をもとに質問紙を作成し,日常の学級経営における指導行動について小学校教論を対象に予備調査を実施,因子分析をおこなった。その結果,従来の研究では「児童を引き上げる指導性」としては注目されていなかった「突き放し」「待つ」「追い込み」,「児童を受け入れる指導性」としては重点が置かれていなかった「対等に話し合う」の指導行動カテゴリーが抽出された。並行して,因子分析による指導行動カテゴリーの確認のため,小学校の学級活動観察と教師へのインタビューをさらにおこなってカテゴリーの修正,予備調査データを再分析した結果,「児童を引き上げる指導性」7カテゴリー(注意統制,追い込み,気づかせる,放る,突き放し,任せる,待つ),「児童を受け入れる指導性」5カテゴリー(変化に応じる,緊張緩和,支援,見守る,対等に話し合う)が抽出された。また,「突き放し」と「待つ」をせずに積極的に働きかけて二つの指導性を実践する『積極介入型』教師と,「身守る」「待つ」を重点的におこなうが「突き放し」もほどほどに実践して二つの指導性を実践する『あたたかい突き放し型』の教師の学級では,比較的学級連帯性と児童の学習意欲が高いことが示された。平成21年度は,予備調査結果の傾向を明確にするために,項目の問題点を修正して,広範囲に多くの小学校教諭を対象とした本調査を実施する。現在,進行中である。
|