Research Abstract |
平成21年度は420名の中学生を対象に調査を実施した。独立変数は,メンタルヘルスリテラシー,情動コンピテンス,適応,従属変数はスクールカウンセラーに対する被援助志向性である。メンタルヘルスリテラシー尺度は,大学生を対象に作成した尺度を中学生用に改善し,「落ち込みに対する否定的質問紙」を作成した。情動コンピテンスは,昨年度,調査し,信頼性が確認された豊田・桜井(2007)の中学生用情動知能尺度を使用した。スクールカウンセラーに対する被援助志向性は,「援助の肯定的側面」,「援助に対する援助の懸念・抵抗感」の項目を使用した。学校心理学的適応尺度において,適応得点が平均値以下の200名を<援助ニーズ群>として,この200名のデータを分析した。スクールカウンセラーに対する被援助志向性である,「援助の肯定的側面」,「援助に対する援助の懸念・抵抗感」を従属変数,情動コンピテンス,落ち込みに対する否定的質問紙(メンタルヘルスリテラシー尺度)を独立変数とする重回帰分析が実施された。その結果,被援助志向性の<援助の肯定的側面>に対しては,情緒コンピテンスの<周囲の人の情動の理解>が正の影響,落ち込みに対する否定的認識の<忍耐不足>が負の影響,<努力不足>が正の影響を及ぼしていた。更に,<援助に対する懸念・抵抗感>に対しては,情緒コンピテンスの<周囲の人の情動の理解>が正の影響,落ち込みに対する否定的認識の<忍耐不足>が負の影響を示していた。この結果から,情動コンピテンスに対しては,<周囲の人の情動の理解>を促すこと,落ち込みの理由を<忍耐不足>と認識しないようにすることで,スクールカウンセラーへの被援助志向性を高められる可能性が指摘された。しかしながら,落ち込みを<努力不足>と捉えることで被援助志向性が高まる可能性が示唆されたので,どのような介入プログラムを開発するかは更なる検討が必要である。
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