2009 Fiscal Year Annual Research Report
不妊治療を経て親とならない夫婦における夫婦関係と生涯発達
Project/Area Number |
20530616
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
小泉 智恵 National Center of Neurology and Psychiatry, 精神保健研究所社会復帰相談部, 協力研究員 (50392478)
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Keywords | 不妊治療 / 生涯発達 / 夫婦関係 / 縦断研究 / 発達心理学 |
Research Abstract |
不妊治療中の夫婦を対象とした質問紙調査を実施しほぼ回収を終えた。約160組の夫婦から調査協力を得た。先行研究の死の受容、障害の受容理論を基に不妊受容尺度を開発し、因子分析をおこない、尺度の構造を明らかにした。尺度は、安堵、不妊不育の否認、子どもをもてないことでの怒り、治療をすることによる取引と落ち込み、治療で獲得できなかったもの、の5因子によって構成された。これは理論上妥当であると考えられる。次に、各因子の特徴を検討した。不妊不育の否認では不妊によるストレスが弱く、精神的に健康を保っていたのに対して、子どもをもてないことでの怒り、治療をすることによる取引と落ち込みではストレスが強く、精神的に不健康であった。これら3因子は人格的変化が少なく、夫婦関係と有意な相関が見られなかった。他方、治療で獲得できなかったもの因子は、獲得するほど精神的に健康的で、配偶者との親密的でサポーティブな関係になり、人格のすべての側面で良好な変化が認められた。これらは、日本発達心理学会第21回大会にて発表した。 不妊治療を経て親とならない夫婦における子どもを喪失することの生涯発達的意味について、流産・新生児死、ハンセン病における強制堕胎、自死遺族と比較検討するシンポジウムを日本発達心理学会にて開催した。不妊治療による子どもの喪失は、子の実体のないために『あいまいな喪失』と位置づけられる。あいまいさゆえに葛藤の深さ、受容の難しさがあり、何度も思い返される経験となる。流産・新生児死は、子の実体はあるが、社会的存在が安定しない前に亡くなるゆえに喪失体験の苦しみと社会的位置づけとギャップで苦しむ。強制堕胎は、喪失体験の苦しみ以上に、社会的にそれ以外の選択が許されない絶望が絡んでいる。自死遺族は子との生活歴の長さゆえの葛藤がある。それぞれ様相は異なるが、喪失の苦しみを抱えて生きる、リアルな生涯発達を記述した。
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Research Products
(5 results)