2010 Fiscal Year Annual Research Report
不妊治療を経て親とならない夫婦における夫婦関係と生涯発達
Project/Area Number |
20530616
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
小泉 智恵 独立行政法人国立成育医療研究センター, こころの診療部, 臨床研究員 (50392478)
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Keywords | 不妊治療 / 生涯発達 / 夫婦関係 / 縦断研究 / 発達心理学 / 喪失体験 |
Research Abstract |
今年度は昨年度のデータが少ない問題点を解消するために調査票回収を積極的におこない、回答者数は女性168人、男性150人に増やすことができた。この最終データで再度因子分析により、治療開始時点の不妊の受容は、安堵、否認、怒り、取引き、落込み、受容の6因子、治療中の不妊の受容は、否認、怒り、取引き、落込み、受容の5因子により構成された。いずれもキュブラー・ロスやサリ・ソルデンの理論と一致した。信頼性は、治療開始時点、治療中ともに、全因子のα係数が.70以上と、十分な内的一貫性が確認された。 治療中の受容プロセスにおいて、各段階の特徴を分散分析により検討した。その結果、1)否認が強いときは、治療に対してストレスを感じず、対処行動も少なく、精神的に健康であった。2)怒りが強いときは治療や対人関係など様々なストレスを抱え、問題解決型対処をし、精神的不健康であった。一方で、運命など不可抗力と考えるようになった。3)取引きが強いときは、治療に対するストレスを多く感じ、問題解決型対処を中心に情緒的対処も行ったが、精神的不健康であった。人格発達的変化は一部感じるようになった。4)落込みが強いときは、治療に対しても夫婦や家族に対しても強いストレスを感じて、問題解決型対処を中心に情緒的対処も行ったが、精神的不健康であった。人格発達的変化はより強く感じるようになった。5)受容が強いときは、問題解決型対処、情緒的対処を多く使用し、精神的に健康で、夫婦で互いにサポートし合い、親密性が深まり、人格発達が最も良好であった。 考察として、受容プロセスのなかで、ストレスコーピングを工夫したり、自己調節したりすることにより、人格的に視野が広がり、柔軟になり、運命を受け入れながらも、自己をしっかり持てるように変化することがわかった。不妊の受容は生涯発達において重要であることが明らかにされた。
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Research Products
(4 results)