2010 Fiscal Year Annual Research Report
コンパニオン・アニマルとの生活が高齢者の精神的健康に及ぼす影響
Project/Area Number |
20530625
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
安藤 孝敏 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (00202789)
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Keywords | 健康心理学 / コンパニオン・アニマル / ペットロス / 精神的健康 / 高齢者 |
Research Abstract |
平成20年度の初回調査および平成21年度において実施した追跡調査データ(有効回答は男性76人、女性91人、合計167人)の分析を行い、次のような知見が得られた。初回調査時点では全員が犬を飼育していたが、追跡調査時点では「飼っていない」という回答が5.4%であった。過去1年間にペットをなくした経験があるのは約1割であることから、ペットをなくした者の半分程度が複数飼育か再び犬を飼ったことを示している。犬以外のペットの種類や犬の飼育数は前回とほぼ同様の状況であり、過去1年間にペット飼育状況に大きな変化が見られなかった。犬の飼育場所は約85%が家の中であったが、年齢による飼育場所の変化は初回調査時よりも顕著であった。飼育されている犬の年齢は9~10歳が最も多く、13歳以上の高齢犬も約15%と少なくなかった。他の調査で指摘されている近年の高齢犬の増加と一致する結果であった。犬との情緒的一体感は強い(尺度の平均得点は高い)が、初回調査の回答と比べると、肯定的な回答の割合が少なくなっていた。 量的な質問紙調査とは別に、過去1年間にペットをなくした経験のある4人の高齢者を対象に実施した半構造化インタビューから次のような知見が得られた。「亡くなったペットとの関係」においてペットとの濃密な情緒的交流を思わせるカテゴリーが抽出できた反面、「今後の飼育」に関して「飼わない」と「不明」という消極的なカテゴリーも見られた。高齢者の場合は、ペットよりも自分が先立ってしまうかもしれないという状況がペットの喪失と共に意識化されてくると考えられた。また、ペットの喪失に際して、家族や近隣の人々、獣医師などとの交流があり、飼い主と周囲の社会的なつながりも重要であると考えられた。
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