2009 Fiscal Year Annual Research Report
広汎性発達障害児を対象とした精神分析的アプローチによる治療効果の判定について
Project/Area Number |
20530642
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
木部 則雄 Shirayuri College, 文学部, 教授 (10338569)
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Keywords | 児童期 / 発達障害 / 精神分析 / 心理療法士 / アセスメント |
Research Abstract |
本研究は、英国の精神分析的アプローチに基づき、広汎性発達障害児に対する精神分析的心理療法の百効性について科学的な見地から検証することを目的としている。本研究は、精神分析家Bionによって論じられている情緒から認知への発達促進という視点に立脚しており、コミュニケーションや社会性の問題を呈する広汎性発達障害児の心理的援助や治療教育的援助に対して、今後大きな示唆を与えるものと思われる。 昨年度から継続している6ケースについて、月1回、研究協力者全員参加し、ケース検討および評価を重ねてきた。また、平成21年12月には、外部講師を招き、6ケースすべての内容の検討・評価を行った。検討・評価の具体的な内容は、こどもの認知発達と情緒発達の両面についてである。治療者との間で表される不安の質や攻撃性の表れ方について焦点を当てて検討した。6ケースはいずれも家族背景や成育歴が異なり、こどもの空想の内容も異なる。だが、根本的な点では、それぞれの子どもが有している内的世界や空想を象徴的な水準で体験できるよう働きかけていく治療態度を心理療法の担当者で共有した。 play therapyの休みに伴う治療者との分離や喪失の体験を扱っていくことで、こどもは分離した存在としての治療者に関心を示し始めた。また、喪失に伴う空想を遊びの中で展開し、自身の情緒をより象徴的な水準で体験できる心的なスペースを獲得し始めたようであった。不安や攻撃性が象徴的水準で体験されるようになると、現実生活でも以前のように強い不安に圧倒されることなく、言葉や遊びを通して表現することが可能となり、問題行動は軽減していった。 3年目には、各ケースを継続して検討・評価するとともに、幼児期、児童期、思春期の発達過程を整理し、自閉症圏のこどもたちのパーソナリティの発達を可能な範囲で縦断的にみていく。また、個々のこどもたちの発達過程に精神分析的心理療法がどのように機能してきたのかについて考察し、思春期以降のパーソナリティの問題についても検討し、考察していく予定である。
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