2011 Fiscal Year Annual Research Report
過酷な体験の語りが支援者/研究者に与える心理的影響
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20530647
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
山口 智子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (00335019)
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Keywords | 過酷な体験 / 語り / 研究者 / 支援者 |
Research Abstract |
本年度の目的は、1、研究者に対する心理的影響を検討するために、「犯罪被害者」の語りを聴く体験について再検討を行うこと、2、過酷な体験の語りを聴くことが支援者にどのような心理的影響を与えるかを検討することであった。 1、については、「犯罪被害者支援」に関する、これまでの日本発達心理学会での発表を再検討し、論文化する予定であったが、検討が不十分であり、まだ論文としてまとめることができていない。 2、については、(1)、「犯罪被害者の心理」について、弁護士会での講演や一般市民向けの研修会を行う際に、二次被害の影響について話題を提唱し、討論の時間を設けて、意見の収集を行っている。また、犯罪被害者の支援団体の運営にかかわりながら、支援者の傷つき体験や支援者間の葛藤についての聴き取りや調整にかかわっている。しかし、支援活動の運営やその調整にかかわるスタンスとなっているため、研究よりも実践の比重が大きくなっており、研究としてまとめることが難しい。(2)、心理臨床での語りの聴き取りによって、カウンセラーがどのような心理的影響を受けるかも支援者への心理的影響と位置づけられる。これについては、日本心理臨床学会で自主シンポジウム「ナラティヴアプローチから心理療法へ」で「心理療法における過酷な体験の語り直し:ライフストーリー研究の視点から」として話題提供を行い、面接過程と支援者としての傷つきなどを検討した。(3)、さらに、新たに、過酷な体験として、認知症に着目することも必要であると考え、認知症をかかえる高齢者の心理やその家族の心理にも視点を広げ、検討している。これについては、著書『老いのこころと寄り添うこころ』を企画し、論文の執筆および編集を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
犯罪被害者については、研究者や支援者の心理的影響は実践に重点が移り、研究としてまとめることが十分にできていない。しかし、認知症の高齢者の問題については徐々に成果がまとまっている。80歳を超えると発症率は20%を超え、本人の不安や家族の不安、負担は大きく、この過酷な体験についての知見をまとめることは意義があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度がこの研究の最終年度になるため、これまでの学会発表などを論文としてまとめること、認知症高齢者とその家族についての著書の編集を行う。
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