2008 Fiscal Year Annual Research Report
超高齢コミュニティに暮らす高齢者の社会的健康度拡大に向けた実践研究
Project/Area Number |
20530650
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Research Institution | St. Catherine University |
Principal Investigator |
矢野 宏光 St. Catherine University, 人間健康福祉学部, 教授 (90299363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 博明 名城大学, 人間学部, 教授 (80168799)
中澤 謙 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (30254105)
大槻 毅 聖カタリナ大学, 人間健康福祉学部, 講師 (20375372)
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Keywords | 超高齢社会 / 抑うつ / 高齢者 / 社会的健康 / 離島 / コミュニティ |
Research Abstract |
現在、研究の対象地としているコミュニティは瀬戸内海に位置する島嶼部にある。このコミュニティが持つ環境背景はきわめて特徴的である。そのひとつに高齢化率の高さが挙げられる。すでに高齢化率が90%を超えている島も存在している。つまり、「ヤング・オールド」が「オールド・オールド」支えていくという社会的システムとして確立されている。これはまさに超高齢社会の特化した状況であると言える。だが、今後、我が国で高齢化が進展し、しかも島嶼部や農村部を中心とした過疎化が拡大すれば、このコミュニティと似かよった状況が生まれることは予想できよう。 次にこの超高齢コミュニティにおいて注目させることは、ソーシャル・ネットワークが強固であるにもかかわらず、高齢者の抑うつ傾向は非常に高いという点である。この原因は個人の人格特性のみならずコミュニティ環境と密接に結びついていると推察される。 この抑うつ傾向とコミュニティ環境との関連性が解明されなければ、どのような健康増進プログラムを施行しても大きな効果は期待できず、さらに対処法も確定することができないと考えられる。 そこで、本研究ではこの超高齢コミュニティを取り巻く「社会環境」について詳細に分析することを目的として調査が実施された。本研究の結果を以下に示した。 1. 高齢者女性の身体活動量が少ないことがIPAQによる調査から判明した。 2. ソーシャル・ネットワークは強固であるが、それを「わずらわしい」、「生き苦しい」と感じ、強すぎるソーシャル・ネットワークがストレスの原因となっている状況が確認された。 3. 「祭」などのイベント事が島民の「ハレ」の場を形成し気分の変容に寄与していたが、高齢化が進み祭事が運営できなくなることにより、「ケ」の日常の継続し、ひきこもる状況を生み出している。 4. 離島というコミュニティに暮らしていくためには、古くからの伝統や慣習を守りながら周囲と同調することが求められる。そのために個人の自由度は制限され、自己開示が進まないことが判明した。
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