2009 Fiscal Year Annual Research Report
超高齢コミュニティに暮らす高齢者の社会的健康度拡大に向けた実践研究
Project/Area Number |
20530650
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Research Institution | St. Catherine University |
Principal Investigator |
矢野 宏光 St. Catherine University, 人間健康福祉学部, 教授 (90299363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 博明 名城大学, 人間学部, 教授 (80168799)
中澤 謙 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (30254105)
大槻 毅 聖カタリナ大学, 人間健康福祉学部, 講師 (20375372)
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Keywords | 超高齢社会 / 抑うつ / 高齢者 / 社会的健康 / 離島 / コミュニティ |
Research Abstract |
本研究では、超高齢コミュニティである瀬戸内海に位置する島嶼部(以下A地域)を研究対象地に設定し、そのコミュニティ及びそこに暮らす高齢者の特徴について調査を進めてきた。 今年度は、この研究対象地の特徴をさらに浮き彫りにするため、他の島嶼部との比較調査を実施した。比較対象地は、人口規模がほぼ同一でありながら社会的健康度が高いといわれている沖縄県八重山地区の島嶼部(以下B地域)である。沖縄県の島嶼部においても高齢化は急速に進行しており(波照間島37.7%、竹富町25.5%)、すでに超高齢社会を形成している。 だが、沖縄の健康・長寿研究の第一人者である鈴木(1994)の先行研究から、沖縄県の離島に暮らす高齢者は社会的健康度がきわめて高いことが判明している。さらに、この地域の高齢者は、抑うつ傾向が低く自殺率も低いのが特徴的である。鈴木はその原因を、沖縄に暮らす高齢者は、単に個々のストレスコーピング能力に優れているのではなく、その高齢者が暮らすコミュニティに社会的健康につながる風俗習慣による特有の社会システムが存在していると述べている。 以下に2地域の比較調査から得られた研究結果を示した。 1.A地域に暮らす高齢者とB地域に暮らす高齢者では、状況に対する認知が全く異なっている。例えば不便な交通事情について、A地域に暮らす者は「歩くことが多くて面倒だ」とネガティブに捉えているのに対して、B地域に暮らす者は「リハビリのためにはちょうど良い」とポジティブな評価をしている。このような認知の傾向は、他の事項に関しても同様であった。 2.島内に継承される伝統行事がコミュニティの凝集性を高め、社会的健康度に影響を与えていることが示唆された。A地域では住民の高齢化により伝統行事が衰退しているが、B地域では島外に居住する者の力を借りた企面・運営が組織化されている。伝統行事が島内居住者のみならず島外に居住者する異世代(こども・孫世代)とのコミュニケーション形成に大きく寄与しているものと考えられる。
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Research Products
(1 results)