2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530654
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
阿部 純一 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 教授 (40091409)
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Keywords | 言語理解 / 認知過程 / 非字義的理解 / fMRI / アイロニー / 意図 |
Research Abstract |
人間は、発話の言語表現の意味を理解し、さらには、その背後にある話者の意図を理解することができる。その話者の意図の理解は、脳内での処理過程において、言語表現の意味の理解と同様に言語に特化された処理の結果として達成されているのか、それとも、より一般的な推論処理の結果として達成されているのかという疑問は、未だに解明されていない。 本研究では、この問題への取り組みの第一歩として、発話の非字義的な理解がなされるときの脳活動を、字義的な理解が達成されるときのそれと比較することで、言語コミュニケーションにおいて達成されている"理解"のどこまでが言語処理固有の結果であるのか、逆に言えば、どこからがより一般的な推論や思考の機能と関わりで達成されているのか、について考察を進める。 2年度目としての本年度は、初年度と同じく、ある発話の意味が字義的にではなく、"アイロニー"として理解される場合の条件について実験的に検討した。また、与えられた発話に対する脳活動反応が、発話が字義的に理解される場合と比べて、アイロニーとして理解される場合に、どのように異なるか(逆に言えばどのように同じであるか)を、fMRI装置を用いた実験の結果から考察した。その成果としては、ある発話がアイロニーとして理解されるには、その発話が、先行する何らかの発話を反復的に言及しており、かつ、当該の文脈に矛盾した意味内容をもつことが必要であることを実験的に確認したことが挙げられる。また、発話の非字義的な意味の理解そめものと、その発話がもつ対人コミュニケーション上の意味合いなり効果なりの理解とが、異なる過程の所産である可能性を示唆する実験結果を得たことも成果といえる。
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