2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530656
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩崎 祥一 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (90117656)
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Keywords | 空間的注意 / 作業記憶 / 個人差 / 視空間機能 / 自動的注意制御 / 能動的注意制御 |
Research Abstract |
作業記憶の個人差がStroop課題のような干渉課題の成績に関係することはよく知られているが、脳の制御システムとしては干渉課題に関わる能動的注意機能と空間的注意制御は別だとされ、空間的注意機能と作業記憶の関係はそれほど明確ではない。本年度は、この点を直接明らかにすることを目指して、作業記憶課題と空間的注意機能を調べる2つの課題(自動的注意制御と能動的注意制御課題)を同一実験参加者に対して行い、作業記憶の成績により高群と低群に実験参加者を分けた上で分析した。作業記憶課題としては、視空間課題とリーディングスパンを用いた言語性課題を用いた。事前の予想としては、視空間課題により測定した作業記憶は、空間的注意機能と同じく空間内の対象の位置に関わる処理を行っていることから、空間的注意の成績、特に有効条件と無効条件の反応時間の差を指標とする注意の効果量と関係すると考えた。これに対し、言語性作業記憶は、流動性知能と関連するとされていることもあり、その個人差は、反応時間(これは情報処理の効率を反映すると考えられる)と関連がある可能性はあるかもしれないが、空間的注意機能とは独立であろうと予想した。得られた結果からは、自動的注意制御は視空間作業記憶とも、また、言語性の作業記憶とも関係しなかった。さらに、能動的注意制御でも、空間的作業記憶と空間的注意制御の間には関係がみられなかった。これに対し、言語性の作業記憶では、能動的注意制御での効果量が小さいという結果が得られた。これは、言語性の作業記憶の高い実験参加者は、相対的に低い実験参加者に比べ、より柔軟に注意制御ができるため、無効な手がかりにより影響されにくいためだと解釈された。以上の結果から、当初の予想とは異なり、空間的注意機能は作業記憶課題の性質によらず、作業記憶の成績からは予測されないことが判明した。
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