2010 Fiscal Year Annual Research Report
単純接触効果研究の新たな展開を可能にする基盤的研究
Project/Area Number |
20530657
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
菊地 正 筑波大学, 名誉教授 (80161420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 富二雄 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (80182781)
綾部 早穂 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (40323232)
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Keywords | 単純接触効果 / 高次認知機能 / 触覚モダリティ / 嗅覚モダリティ / 意識 / 注意 |
Research Abstract |
今年度の実施計画は、1.高次認知機能の単純接触効果に及ぼす影響2.視覚以外の感覚モダリティ(触覚と嗅覚モダリティ)における単純接触効果の測定、であり、ほぼ研究計画通りに進められた。 計画1では、単純接触効果は閾上よりも閾下で大きいとする見解と閾下での単純接触効果は閾上の効果ほど明確ではないとする見解があり、この点を確かめるために、閾下の視覚刺激提示方法として視覚マスキングの手法を用いた。この結果、閾下単純接触効果はほとんど得られなかった。閾下刺激提示による単純接触効果に関しては更なる検討が必要である。また単純接触効果生起に関わる視覚表象の形成に刺激の物理的提示(ボトムアップ的入力)が必要かどうかを検討したところ、内的に生成された視覚イメージに対しても単純接触効果が生起し、この効果の生起には高次な表象が関与していることが示された。 計画2では、視覚以外の触覚や嗅覚を用いた場合の単純接触効果を計測する手法の検討がなされた。まず触覚における単純接触効果に関して、能動的触知を用いて検討した。刺激提示用の箱内(視覚情報遮断)に方向を固定して設置した木製ブロック(左右上下非対称・無意味)を両手で触知させ、その中心点を指差するように求める課題を接触段階とした。直後にブロック(接触と新奇各5種類)を再度触知きせ、形の好ましさを7段階評価させることで、単純接触効果の生起が確認された。嗅覚における単純接触効果に関しては、ニオイカプセルが練り込まれた市販のシャープペンシルの替芯を刺激材料として用い、これを用いて四字熟語の書き取りを自宅で20日間続けさせることで、このニオイに無自覚的に接触する実験手続きをとった。この方法の場合ニオイや実験の意図に気付いた参加者はいなかったが、単純接触効果の生起も認められなかった。ニオイ強度が低く、閾下提示であった可能性も考えられるが、ニオイそのものに注意が向かなかったために単純接触効果が生起しなかったと考えられた。
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