2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代シティズンシップ教育における政治的リテラシーの思想研究
Project/Area Number |
20530685
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小玉 重夫 The University of Tokyo, 大学院・教育学研究科, 教授 (40296760)
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Keywords | 教育学 / シティズンシップ / 政治的リテラシー / 公共性 |
Research Abstract |
1 研究の目的と本年度の課題 本研究では、シティズンシップ教育の中核をなす政治的リテラシーの問題に焦点をあてて、その背後にある思想史的背景を検討すると共に、各国における実践的展開をフォローし、日本における展開可能性につなげていくことを目的としている。本年度は特に、主としてアメリカおよびイギリスにおける1990年代以降のシティズンシップ論において、政治的リテラシーの問題がどのように取り扱われてきたのかを、論争史の文脈に即して、思想史的に検討し、明らかにすることを課題とした。 2 本年度の成果 イギリスとアメリカのシティズンシップ論争史に関わる文献と資料を収集し、その検討を行った。特に、政治的リテラシーの背後にある公共性や学力の問題を検討し、その成果を論文および著書としてまとめた。さらに、政治教育とその担い手に関わる問題を「遂行中断性」という概念に注目して理論化する作業にも着手し、論文化した。また、渡米とメール交信を通じ、ミネソタ州セントポール市内の公立中等学校(チャータースクール)であるアヴェロン校のカリキュラムと実践に関して、アヴェロンの創設に闘わつてきたハムリン大学のウォルター・エンロー、および、同校のキャリー・バッケン教論、さらにミネソタ大学のハリー・ボイトへの聞き取りを進めた。その分析については次年度に行うことを計画している。 3 成果の重要性と意義 遂行中断性という概念は、遂行を可能にするとともに、それを宙づりにしつつ、廃棄し刷新することを可能にする権力を指す。政治教育と、その担い手としての教師の問題を、権力の遂行性に関わる問題として議論する先行研究の蓄積はあるが、遂行中断性と関わらせて論じる研究は少なく、その意味で、この概念に注目した意義は大きく、本研究の課題を深めるうえできわめて重要な概念を発見することができた。
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