2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530726
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
篠原 清昭 岐阜大学, 教育学研究科, 教授 (20162612)
|
Keywords | 台湾 / 教育バウチャー / 幼児教育券 / 教育改革 / 民主化 / 市場化 / 自由化 |
Research Abstract |
本年度は、主に台湾の教育バウチャーと学校の民営化の実証的な研究を行った。詳細には、実際に台湾で導入・実施された保育バウチャーとしての「幼児教育券」を対象として、第一にその導入の過程を教育政策の動向を中心に分析した。この際、その導入を推進した運動サイドのリーダー(元台湾大学教授黄武雄、同張清渓)へのインタビューにより、その政策化の要因を検討した。第二に実際にその幼児教育券の受益者である保護者へのインタビューを当該の幼稚園(台北県私立佳美幼稚園)で行うとともに、台湾内の研究者の先行調査研究を分析し、幼児教育券導入の評価意識等を検討した。 以上のことから、つぎのことがらが明らかとされた。 1。幼児教育券の導入は財政効果においては微妙であり、例えば保護者の負担軽減の面では消極性がみられた。その理由は主に実際の幼児教育券の額の少なさにあった。 2.幼児教育券の導入は教育効果においても微妙であった。実際、台湾国内の研究者の間でもその効果への評価は分かれ、また当事者のアンケート評価も確定的ではなかった。その原因は、「教育効果」の指標があいまいであることと、その成果指標が数量的な基準になじまないことにあった。例えば、保護者の満足度を指標としたとしても、その「満足」の指標は多様であり、その「質」は確定できなかった。 3.幼児教育券の導入は、社会効果においては低かった。このとき、その社会効果を「選択の自由化」「公私の良性的な競争による質の向上」さらに「無認可園(所)の解消」とした場合、実際に幼児教育券はいずれの要因にも効果を及ぼさなかった。 以上のことから、台湾の教育バウチャーは制度構想と制度実現の間に例葛藤があり、制度構想の次元で主目的とされた学校選択の自由化に効果を示さなかったことが問題とされる。
|
Research Products
(3 results)