2008 Fiscal Year Annual Research Report
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20530733
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小池 源吾 Hiroshima University, 大学院・教育学研究科, 教授 (00178170)
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Keywords | 大学開放 / 大学拡張 / ウイスコンシン大学 |
Research Abstract |
本年度は、アメリカ大学拡張の社会思想史的研究の初年度として、ウィスコンシン大学における大学拡張について研究を実施した。その成果は、以下のように要約することができる。 1.ウィスコンシン大学拡張は、やがてアメリカ大学拡張のプロトタイプとしての役割を果たすことから、ウィスコンシン大学拡張が、同時代人になぜ注目され、かつどのように評価されていたのかを明らかにするなめ、当時の代表的な言論人、W.ハード、L.ステファンズ、F.P.ストックブリッジの評論を詳細に分析した。 2.通話では、アメリカ大学拡張史は、イギリス大学拡張の導入→大学拡張運動の伝播→衰退期→ウィスコンシン大学における大学拡張の復活と、単線的に捉えられてきた。しかし、今回の研究からそれに疑義を呈する根拠が得られた。 3.すなわち、ウィスコンシン大学拡張は、ファーマーズ・インスティチュートをはじめ、それまで農民に対して大学が供与してきた恩恵を都市部住民にも保障しようとするところから生成し、発展をみたことがわかった。しかも、現実生活の豊かさや安心を求める彼らのニーズに即応する事業展開を企図したから、同じく「大学拡張」という名辞を冠していても、英米のそれは、理念においても内容、方法において根本的に異なる。したがって、ウィスコンシン大学拡張は、イギリスのそれとはまったく別の系譜に属し、むしろ異質の新たな「種」の誕生をみなす方が妥当であるとの結論を得た。
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